僕の隣に0さんが…。
焦る。
確かに僕は焦っている。
単に席が隣同士になるというだけなのに。
さらに、偶然にも僕の席は今の位置と全く変わらない。
僕は今の席に座ったまま、0さんが向こうから来てくれる。
まるで僕の家に遊びに来たかのように…、
そんなくだらない想像をしてしまうほど、今の僕は高揚している。
つくづくガキだな、と自分でも思う。
彼女にとって僕は同じ中学出身ってだけの単なるクラスメイトにすぎないのだ。
…わかってるってば。
そうこう(心の中で)言っている間に…
Oさんが…
隣に…
…来た。
目が合った。
というより向こうが合わせてきた。
「ども〜。中学の時も確か隣同士になったことあるよね?」
左胸の肉の塊がドクンと大きく脈打つのを感じた。
Oさんから話しかけてきた!
きっと気を使ってくれたんだ。早く何か答えないと!
何か!
何か…!
「あ、うん。多分。…確かに隣…だったと思う、絶対、…久しぶり…。」
なんだこりゃ。
つくづく自分の口下手を呪う。
「うん。絶対。毎日クラスで顔合わせてるんだから久しぶりじゃないよ〜、…よろしくね〜。」
「うん…よろしく。」
ツッコミ付きで返された。
クソッ、もっと気の利いたこと言えないのか僕は!
しかし…、高校に入ってから初めて0さんと話してしまった。
確かに拙い返答だったが、無愛想だとは思われてはいない…と思う。かっこわるいけれども“女子と話すの慣れてないんだ〜”とでも思ってくれればそれでいい。
それにしても…、0さんと会話している時に不思議な感覚を感じた。
僕と0さん…ふたりの空気が混ざり合うというか…。
モヤモヤする。
家に帰るまで頭の中でさっきの会話が“1曲リピート”状態だ。
つづく